保育指針改定で求められる職員の資質向上への具体的取り組みとは

保育指針改定で厚みを増した「職員の資質向上」

保育所保育指針が改定されました。

「職員の資質向上」に関しては、職員の自己研鑽に関する努力とともに、園としての組織的な取り組みが一層求められるようになり、改定前よりも厚みが増した内容となっています。

今回は、保育指針改定を踏まえて、各園が実施すべき職員の資質向上への具体的取り組みについて解説します。

1.「根拠に基づく」職員の自己研鑽

「1 職員の資質向上に関する基本的事項」の「(1)保育所職員に求められる専門性」の箇所では、

「各職員は、自己評価に基づく課題等を踏まえ、保育所内外の研修等を通じて、保育士・看護師・調理員・栄養士等、それぞれの職務内容に応じた専門性を高めるため、必要な知識及び技術の修得、維持及び向上に努めなければならない」

と記されており、職員が知識・技術の習得などの自己研鑽をする際には、自己評価結果を踏まえた「根拠」を持って臨むことが求められています。

職員の研修受講に当たっては、園長や主任の判断により職員に必要な研修受講を促すケースが多いと思いますが、自己評価の結果や本人の意向を確認した上で研修受講を進めていくことが今まで以上に必要となります。

2.職員の役割分担やキャリアパスの作成

基本的事項の「(2)保育の質の向上に向けた組織的な取組」では、自己評価結果に基づいて

「保育内容の改善や保育士等の役割分担の見直し等に取り組むとともに、それぞれの職位や職務内容等に応じて、各職員が必要な知識及び技能を身につけられるよう努めなければならない」

としています。

保育内容の改善に結びつく取組みが園内で積極的に実施されるような職員間の役割分担の見直しとともに、キャリアパスに基づく職員の育成をしていくことが求められています。

3.研修計画の作成と着実な実施

さらに、職員の研修については、旧指針では「3 職員の研修等」における2項目の記載であったものが、「3 職員の研修等」および「4 研修の実施体制等」の計5項目の記載となり、内容が大幅に増えています。

研修に関するポイントは、

① 体系的な研修計画の作成:職員の職位や職務内容を踏まえた体系的な研修計画を作成する

② 職場における研修:園内での研修の充実を図り、日常的に職員同士が主体的に学び合う姿勢と環境を整える

③ 外部研修の活用:必要に応じて外部研修への参加機会が確保されるようにする

④ 組織内での研修成果の活用:研修で得た知識及び技能を他の職員と共有し、園全体の保育の質と専門性の向上につなげる

⑤ 研修の実施に関する留意事項:特定の職員に偏ることなく研修受講が行われるように配慮するとともに、研修成果を生かせる職務内容を考慮することが望まれる

となります。

4.園長の責務

そして、園長の責務としては、

「保育所における保育の質及び職員の専門性向上のために必要な環境の確保に努めなければならない」(具体的には、職員の役割分担の見直し、キャリアパスの作成、体系的な研修計画の作成など、本章で求めらている具体的な取り組みを実施すること)ことと、

「保育所の全体的な計画や、各職員の研修の必要性等を踏まえて、体系的・計画的な研修機会を確保するとともに、職員の勤務体制の工夫等により、職員が計画的に研修等に参加し、その専門性の向上が図られるよう努めなければならない」

ことが述べられています。

保育指針が求める職員の資質向上への取り組み
【保育指針が求める職員の資質向上への取り組み】

今後の指導監査や第三者評価などにおける重点ポイント

上記のように、職員の資質向上に関連して求められる職員間の役割分担の見直し、キャリアパスの作成、体系的な研修計画の作成・実施・成果の活用といった点については、今後の指導監査や第三者評価などにおける重点ポイントとなっていくことが考えられます。

特に、処遇改善等加算の動向を踏まえると、加算による収入増加に見合う職員育成の取り組みが着実に実践されていることを示していく必要がでてきます。

改定された保育指針に対する理解を深めて、実践できる園を目指していきましょう。

参考)保育所保育指針2018年度版「第5章 職員の資質向上」

第5章 職員の資質向上
第1章から前章までに示された事項を踏まえ、保育所は、質の高い保育を展開するため、絶えず、一人一人の職員についての資質向上及び職員全体の専門性の向上を図るよう努めなければならない。
1 職員の資質向上に関する基本的事項
(1)保育所職員に求められる専門性
子どもの最善の利益を考慮し、人権に配慮した保育を行うためには、職員一人一人の倫理観、人間性並びに保育所職員としての職務及び責任の理解と自覚が基盤となる。
各職員は、自己評価に基づく課題等を踏まえ、保育所内外の研修等を通じて、保育士・看護師・調理員・栄養士等、それぞれの職務内容に応じた専門性を高めるため、必要な知識及び技術の修得、維持及び向上に努めなければならない。
(2)保育の質の向上に向けた組織的な取組み
保育所においては、保育の内容等に関する自己評価等を通じて把握した、保育の質の向上に向けた課題に組織的に対応するため、保育内容の改善や保育士等の役割分担の見直し等に取り組むとともに、それぞれの職位や職務内容等に応じて、各職員が必要な知識及び技能を身につけられるよう努めなければならない。
2 施設長の責務
(1)施設長の責務と専門性の向上
施設長は、保育所の役割や社会的責任を遂行するために、法令等を遵守し、保育所を取り巻く社会情勢等を踏まえ、施設長としての専門性等の向上に努め、当該保育所における保育の質及び職員の専門性向上のために必要な環境の確保に努めなければならない。
(2)職員の研修機会の確保等
施設長は、保育所の全体的な計画や、各職員の研修の必要性等を踏まえて、体系的・計画的な研修機会を確保するとともに、職員の勤務体制の工夫等により、職員が計画的に研修等に参加し、その専門性の向上が図られるよう努めなければならない。
3 職員の研修等
(1)職場における研修
職員が日々の保育実践を通じて、必要な知識及び技術の修得、維持及び向上を図るとともに、保育の課題等への共通理解や協働性を高め、保育所全体としての保育の質の向上を図っていくためには、日常的に職員同士が主体的に学び合う姿勢と環境が重要であり、職場内での研修の充実が図られなければならない。
(2)外部研修の活用
各保育所における保育の課題への的確な対応や、保育士等の専門性の向上を図るためには、職場内での研修に加え、関係機関等による研修の活用が有効であることから、必要に応じて、こうした外部研修への参加機会が確保されるよう努めなければならない。
4 研修の実施体制等
(1)体系的な研修計画の作成
保育所においては、当該保育所における保育の課題や各職員のキャリアパス等も見据えて、初任者から管理職員までの職位や職務内容等を踏まえた体系的な研修計画を作成しなければならない。
(2)組織内での研修成果の活用
外部研修に参加する職員は、自らの専門性の向上を図るとともに、保育所における保育の課題を理解し、その解決を実践できる力を身に付けることが重要である。また、研修で得た知識及び技能を他の職員と共有することにより、保育所全体としての保育実践の質及び専門性の向上につなげていくことが求められる。
(3)研修の実施に関する留意事項
施設長等は保育所全体としての保育実践の質及び専門性の向上のために、研修の受講は特定の職員に偏ることなく行われるよう、配慮する必要がある。また、研修を修了した職員については、その職務内容等において、当該研修の成果等が適切に勘案されることが望ましい。