より良い職場を目指す園内研修のテーマ~「社会人基礎力」を参考に~

より良い職場を目指すための園内研修とは

処遇改善等加算Ⅱの要件である保育士等のキャリアアップ研修が、都道府県単位で計画的に実施されていく予定となっています。

同研修では、1.乳児保育、2.幼児教育、3.マネジメント、4.障害児教育、5.保育実践、6.保護者支援子育て支援、7.食育・アレルギー対応、8.保健衛生安全対策、という8の分野が設定されており、保育士の専門性と処遇の向上をリンクさせていくことが目指されています。

しかし、職場としての園のあり方を振り返ってみると、より良い職場をつくるためには保育士の専門性向上の前に、職員一人ひとりが「組織で働くとはどういうことか」を理解し、チームワークを重視した働き方をしていくことが重要といえます。

職員一人ひとりの専門性の向上に役立つ外部研修とともに、より良い職場を目指す職員の意識を高める園内研修を実施していくことが必要です。

今回は、経済産業省が提唱している「社会人基礎力」という考え方を参考に、職員が自らの働き方を変えていくきかっけとなるような研修について考えます。

【社会人基礎力イメージ図】

社会人基礎力イメージ(経済産業省)
出所)経済産業省

「社会人基礎力」の理解と実践

社会人基礎力とは、学生自体に培った基礎学力や専門知識に加えて、それらを活用しながら「多様な人々とともに仕事を行っていく上で必要な基礎的な能力」と定義されており、以下の「3つの能力/12の要素」に整理されています。

1つ目の能力:前に踏み出す力(アクション)~一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力~

要素1 主体性・・・物事に進んでい取り組む力

要素2 働きかけ力・・・他人に働きかけ巻き込む能力

要素3 実行力・・・目的を設定し確実に行動する力

この能力は、主体性や積極性、責任感といった業務遂行に関する姿勢と強く関係しているといえます。実は、この項目は、組織側が最も求めているにもかかわらず、職員側に不足している部分でもあります。

保育士としての知識や専門性を高める前に、まずは仕事に対する積極的な姿勢を持って欲しいことを伝える必要があります。

2つ目の能力:考え抜く力(シンキング)~疑問を持ち、考え抜く力~

要素4 課題発見力・・・現状を分析し、目的や課題を明らかにする力

要素5 計画力・・・課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力

要素6 創造力・・・新しい価値を生み出す力

この能力は、毎日の保育現場で発生する問題を解決しながら、保育目標を意識した計画的な業務の遂行をしていく上で必要なものといえます。

経験を積んだベテランの職員に是非発揮して欲しい能力ですね。職場の課題を解決し、マンネリを防ぐために、職員が考える機会を意識的に増やしていくことが望まれます。

3つ目の能力:チームで働く力(チームワーク)~多様な人々とともに、目標に向けて協力する力~

要素7 発信力・・・自分の意見を分かりやすく伝える力

要素8 傾聴力・・・相手の意見を丁寧に聴く力

要素9 柔軟性・・・意見の違いや立場の違いを理解する力

要素10 情況把握力・・・自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力

要素11 規律性・・・社会のルールや人との約束を守る力

要素12 ストレスコントロール力・・・ストレスの発生源に対応する力

この能力は、チームワークを機能させるために必要な職員の行動を示しています。

コミュニケーションに関連する能力が重要なのはいうまでもありませんが、この中で特に注目したいのは、要素12のストレスコントロール力です。

チームで働くなかでは、自分の思い通りにならない状況も発生します。そのような状況の中でも、周囲の人と粘り強くコミュニケーションを図ることが必要だといえます。

一方で、そういう状況にある職員をフォローする機会(上司による面談や問題行動を起こす職員への注意・指導の実施など)を職場の中に設けることや、職員一人ひとりが意見を言いやすい職場づくりを目指すことを検討すべきです。

課題があっても目をそらさず、チームで乗り越える意識を持つ

今日、社会人基礎力が求められる背景には、仕事で壁にぶつかった職員が、乗り越える努力をする前に放棄をしてしまうという傾向や、若者の仕事への執着の低下が危惧される状況があると考えられます。

ミスをしてもよいから積極的に取り組むことや、壁を乗り越えることで自分が成長できる、苦手な上司でも上手く付き合う、といった仕事の達成感や面白みを職員が体感できるような職場が、求められているといえます。

社会人基礎力を材料にした園内研修を実施することにより、職員一人ひとりが園での仕事を大切にして、課題があっても目をそらさずにチームで乗り越える意識を持つことを伝えていくことができれば、より良い職場に向かって進歩できるはずです。

是非、ご検討ください。