「働き方改革」で求められる保育園における「労働生産性の向上」とは

保育園における労働生産性の向上とは?

「働き方改革」が求められるようになっています。

その中では、残業を減らしてワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を充実させる、正規職員と非正規職員との格差を改善するといったテーマと並んで、「労働生産性の向上」が重視されています。

これまで、保育園においては「労働生産性の向上」というテーマは、あまりなじみがないものだったかもしれません。要するに、職員一人当たりの労働の成果を増やしていくことであり、一人当たりの(1)収入を増やすか、または(2)労働時間を短くする、ことで達成することができます。

保育園の場合、収入は公定価格によって決まりますので、一般的な商品やサービスの場合のように価格を上げることで収入を増やし、労働生産性の向上を達成することはできません。労働生産性を向上させるためには、職員一人ひとりの残業時間を短くしたり、より少ない職員数で運営を行うことが必要になります。

保育園が労働生産性向上に取り組むべき目的

では、どのような目的をもって保育園は労働生産性向上に取り組むべきでしょうか?

それは、職員の効果的な働き方を追求することによって、職員がゆとりを持って働くことができる職場環境を実現し、保育内容の充実につなげていくことにあります。

例えば、「評価・反省をする時間がどうしても時間内にとれない」、「やるべき仕事が多すぎて、保育内容の充実に手が回らない」、「現場に余裕がなく、職員間の人間関係がギスギスしている」といった問題を解決するために、労働生産性の向上に向けた取り組みを進めていくことが重要になります。

取り組みを進めていく上で重要なことは、労働生産性向上の目的と結果を取り違えないことです。

労働生産性の向上は、時間外手当の削減など保育園の収支面でプラス要因をもたらします。しかし、それはゆとりある職場環境を実現した「結果」として実現するものです。収支改善を「目的」として労働生産性の向上策を進めると、職員からは「残業代の削減を始めとするコストカット」として受け止められ、「良い保育をしたい」という職員のモチベーションを削ぐことにつながる可能性があります。

ゆとりある職場を実現し、その成果を保育に活かして子どもに還元するという「目的」を、職員に良く理解してもらうことが大切です。

労働生産性向上を進める視点

保育園における労働生産性を高める視点として、以下の3つが挙げられます。

(1)仕事の標準化を進めて、「どの程度、どのように」を明確にする

(2)仕事の省力化に役立つ機器導入や仕事の分業化を図る

(3)職員一人ひとりの仕事に関する意識変革を促す

仕事の標準化を進めて、「どの程度、どのように」を明確にする

まず、(1)の「仕事の標準化を進めて、『どの程度、どのように』を明確にする」ですが、保育園での様々な仕事について、園が求める成果とその達成方法を職員間で共有し、最少の時間で成果を上げることを目指すものです。

評価・反省の実施という仕事を例に考えると、

● これまでの評価・反省の内容を踏まえた上で、園として求める記録の水準を明確にする(達成水準の明確化)

● 職員が記入する記録のポイントや文章量、例文などを統一的に示してマニュアル化している(仕事の標準化)

● 業務時間内に記録作成のための時間を設定し、その時間内で終わらせるように職員に周知している(作業時間の確保)

● 職員が「何を記録に書くか」を意識して仕事にあたるように意識させ、メモを取っておく習慣づけをする(効率的な仕事の意識)

● 文書は箇条書きで簡潔に行うなど、書きやすく・見やすい、文章のスタイルを確立している(作業効率の向上)

といったことがポイントになります。

大切なことは、評価・反省が苦手な職員でもクリアできる水準の設定と、その方法を具体的に示してあげることです。

仕事の省力化に役立つ機器導入や仕事の分業化を図る

仕事の省力化に役立つ機器の導入も、労働生産性の向上に役立ちます。

情報管理システムによる情報共有や記録作成の効率化、インカムを活用した職員間の情報伝達の効率化、登降園管理システムの導入による事務作業の削減など、職員負担の軽減に結びつく機器は積極的に取り入れていくことが望ましいです。

また、保育事務や保育補助といった職員を採用することで、保育士の間接業務を削減し、保育士に集中できる環境をつくりだす仕事の分業化も効果的です。

職員一人ひとりの仕事に関する意識変革を促す

仕事の標準化、機器の導入、職員間の分業化を進めたとしても、それを積極的に活用しようという職員の意識がなければ効果が上がりません。

職員に、

● 勤務時間内に仕事を終わらせるために、スキマ時間をムダにしない

● メモを取ることを習慣化し、あいまいな記憶にもとづくいい加減な仕事をしない

● ルーティンな事務作業はため込まず、その都度処理しておく(ため込みによる作業は膨大なムダを発生させます)

● 自分に余裕がある時は、他の職員を積極的にサポートするチームワークを発揮する

● 逆に自分に余裕がない時は、他の職員や上司にサポートをお願いする(そうすることが恥かしくないことを職場全体で共有しておくこと)

などのポイントを意識した仕事の進め方をしてもらうことが大切です。

職員の負担を減らして、保育内容を充実させよう!

職員の本業は保育です。職員が保育以外の仕事に忙殺されて子どもに関わる時間が削られてしまう仕事のあり方は、職員にとっても子どもにとっても幸せなものではありません。

仕事の進め方や労働環境の見直しを通じて、職員が、じっくりと子どもに向き合う時間的・精神的余裕を持つことができる、余暇を楽しむことで常にフレッシュな精神的状態で職場に入る、といった状態をつくり出すことが保育園に求められる労働生産性の向上といえます。

皆様の保育園でも、労働生産性の向上を図ることで、職員の負担軽減・保育内容の充実につなげていきましょう!